高田別院だより 2009年3月15日 第18号
台所のおばさんと私
第四組 西勝寺 江口 章子

  昨年六月、自坊に於いて、本堂修復落慶法要が厳修されました。好天に恵まれ、じっとしていても汗ばむほどの暑い日となりました。前日より容易しておいた漬物に変化あり。塩が薄かったため少し臭いはじめたのでした。「奥さん、これダメ。野菜、ほかにないの?」台所のおばさん達(とは言っても私と同年配の人ばかり)が騒ぎはじめました。もうすぐお斎がはじまるという時でした。予備の野菜がないとわかるなり、全員が家へ走り、野菜を持って帰るやいなや、参詣人に対応できるだけの桶いっぱいの漬物を作ってくれました。おばさん達のパワーと手際の良さに、ただただ感謝でした。

 台所の手伝いのおばさん。寺の行事にはなくてはならない縁の下の力持ち。そんなおばさん達は、お斎の為ばかりではなく、日々寺の、そして何よりも坊守であるこの私の力になってくれる人。今更ながら感謝しています。何年か前までは、高齢に伴い退いていかれたおばさん達の後継者に悩んでいました。昨今、お勤めをしている人がほとんどで、手伝ってもらうのにも気を使いすぎ、声かけ″にも遠慮したりで、ひとりで仕事を抱えて大変な思いをしていました。おばさん達とは平素から寺役に出かけて行っては、お話ししたり、相談に乗ったりで、気心の知れた人達のはずなのに…。でもその遠慮は間違っていました。

ある時、お勤めをしているおばさん達に、思いきって平日の事にもかかわらず声をかけたら、「お寺のことだし、お休み取るよ。いつでも声かけて」との返事。本当にうれしかったものです。おばさん達との関係は、前坊守、前々坊守、それ以前の坊守たちがそれぞれ培ってきたものです。坊守会連盟では「寺をひらく、私をひらく」のテーマで研修会が続けられています。このテーマこそ私に「しっかり坊守をやっているのか。私がひらかれているのか」との問いかけであります。おばさん達との交流を通して、改めてこの問いに向き合っているこの頃です。
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